Naoko Kawai Songs

〜河合奈保子楽曲への考察〜



2002.5

”歌わない河合奈保子さん” の素晴らしさ
 


河合奈保子さんの素晴らしさは”歌わないところ”にある。
言葉にしてしまうと違和感がありますが、永年のファンである私はそう信じて疑いません。


最近チャート上位の最高年齢記録を更新した小田和正さんのオフコース時代の曲に
「言葉にできない」というのがあり、同級生の熱狂的なファンに対して、かつて私は
「これがオフコースのベスト」と半分皮肉混じりに言い放ったことがあります。

つまりそれば
「彼らの歌声は言葉を必要としないくらいそれだけで素晴らしい」
(五人組のコーラスサウンドを含めて)という意味と
「あの甘ったるい歌詞を聴かずに済むのが素晴らしい」
(当時その女性的な歌詞は批判の対象として恰好)という皮肉の両方の意味でした。


今でも小田さんはそのころのままの感性の歌詞を歌い続けられてヒットを飛ばしている
わけですから、これは”批判をしていた時代”の方が間違っていたようです。(笑)



それとは少し意味は違いますが、河合奈保子さんがイントロや曲中で聞かせてくれる
スキャットやコーラスやシャゥト(?)は実に耳に心地よく感じたものでした。
つまり”歌詞のない歌声”の方がより素晴らしということになります。


具体的には 
「UNバランス」 (作詞:売野雅勇 作曲:筒美京平) のイントロの
「ルルルルルゥ・・・」というスキャット

「ジェラストレイン」 (作詞:売野雅勇 作曲:筒美京平) のサビのところの
「ジェラストレイン、let us back  ジェラストレイン、harry up」のコーラスや、
その後の 「ha...aaha....」 といったシャゥト(?)等です。


松田聖子さんのような”(良くも悪くも)非常にプロを感じさせる歌声”に対して
(キャラクターとして完全に確立された松田聖子を演じるという点で一貫している)
彼女のどこかアカ抜けない歌声はあくまで”歌のうまい近所のお姉さん”的で
言葉(特に日本語)の端々にある種の端切れの悪さを感じました。

それは関西出身ということによるものなのか
専門的な歌唱指導を受けていないからなのか
”もともと持って生まれたイマイチあか抜けない歌い方”なのかわかりませんが
それが彼女を”大ヒット歌手”にしなかった大きな理由のひとつであり、あまり人に
あからさまに嫌われない不思議な人気の大きな理由だったのではないかと思っています。


ある意味それを象徴しているのがアルバムの構成と売り上げです。
全体がひとつのコンセプトで統一されていることが多かった松田聖子さんのアルバムに
対して、彼女の特に中期のアルバムは、A面、B面、両面といった単位で一人の作曲家
が楽曲提供するものが多く、当時のアイドルのアルバムとしては極めて異色です。

(作曲家としては 筒美京平・来生たかお・八神純子 等)
(作詞家としては 来生えつこ・竹内まりあ・売野雅勇 等)

そしてこれらの売り上げはシングルのそれに比較しても極めて順調そのもので、中には
シングル曲が挿入されていないものも結構あったりします。


中でも飛び抜けて異色なのはデビットフォスターやピーターセテラ、TOTOのメンバーと
ロスアンジェルスで作成したアルバム「デイドリームコースト」で、”お上りさん成金製作”
とは微塵(みじん)も感じさせないくらい、生き生きと堂々と歌っておられます。
ここでも素晴らしい ”スキャット&コーラス&シャゥト(?)” を聞かせてくれます。
もちろん全曲海外作家の書き下ろしです。(ああ、バブリー・・・・)


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